Compiler Construction Lecture 10/29

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来週、11/5, 11/12 の授業はお休みとします。


先週の復習

先週はさまざまなCPUのレジスタアーキテクチャ(Register architecture)について学んだ。

例えば Intel 386 ならば、 このようなレジスタを持っている。そして、 これ がアセンブラの命令表である。


i386のアセンブラ

i386 は比較的、対称性に欠ける命令体系を持ち、レジスタも少ない。しかし、可変長の命令を持つので、コードが若干コンパクトになるという特徴がある。アドレッシングモードも少ない。

例えば、

     negl %eax    レジスタEAXのnegativeを取る
     negl a       大域変数aのnegative を取る
     negl (%eax)  レジスタEAXの指すメモリのnegativeを取る
     negl (%ebx+%eax) EAX+EBXの指すメモリのnegativeを取る

間接参照には、さらにオフセットを付けることができる
     negl 4(%eax) レジスタEAXの指すメモリから4byteずれたところのnegativeを取る
     negl 4(%ebx+%eax) EAX+EBXの指すメモリから4byteずれたところのnegativeを取る


問題1

i386はlittle-endianであり、メモリにはメモリのアドレスが小さい方に、 数値の小さい桁から格納される。また、%eaxレジスタは、高い方の桁が8bit %ahレジスタ、低い方の桁が8bit レジスタ%alとなっている。以下の数値は16進表記とする。

メモリの内容が以下のようになっているとき、

    0000100:   23
    0000101:   45
    0000102:   56
    0000103:   78
    0000104:   90
    0000105:   12

  1. movl 0x100,%eaxは、memory 0x100 の値を%eaxレジスタに格納する。この命令を実行した時、 %eaxレジスタの値はいくつになるか? %ahレジスタは? %alレジスタは?
  2. movl $0x100,%ebxは、0x100 の値を%ebxレジスタに格納する。
  3. %ebx レジスタが、0x100の時に、movl (%ebx),%eax を実行すると %eax レジスタの値は?
  4. incl %ebx を実行したあとに、movl (%ebx),%eax を実行すると %eax レジスタの値は?
  5. その後、movl 4(%ebx+%eax),%ecx を実行すると %ecx レジスタの値はどのアドレスのメモリからロード(取得)されるか?
  6. movb 2(%ebx),%al を実行すると %eax レジスタの値はどうなるか?
  7. movsbl 2(%ebx),%eax を実行すると %eax レジスタの値はどうなるか?
  8. movsbl 4(%ebx),%eax を実行すると %eax レジスタの値はどうなるか?
  9. leal 8(%ebx+%eax),%ecx を実行すると %ecx レジスタの値は?


さらにgdbの使い方を追求する

BSD/OS の gdb の man ページには、ほとんどなんの記述もない。その代わりに、info ページが充実している。mule の info か、または、info コマンドを用いて、GDB の情報を調べてみよ。

gdb には、i386 のレジスタ一覧を表示する機能はない。gdb のaliases 機能を用いて、gdb にその機能を追加するには、

    define regs
    printf "%%eip=%08x: %%eax=%08x %%ebx=%08x %%ecx=%08x %%edx=%08x %%edi=%08x %%esi=%08x %%ebp=%08x %%esp=%08x\n", $eip,$eax,$ebx,$ecx,$edx,$edi,$esi,$ebp,$esp
    end

を.gdbinitに追加する。

    stepi
    disass $eip $eip+1

は何をするコマンドが調べよ。

アセンブラのシングルステップが便利になるようなaliasを定義してみよ。


アセンブラ(Assembler)を使った計算

i386では、基本的に演算は、register to register で行われる。ここでは、以下のプログラムを使おう。

    int a=4,b=3;
    main()
    {
        a = a+1-(b-123);
        return a;
    }

これを gcc -S でコンパイルしてみると、.s というファイルに以下の内容がかかれる。(コメントはでないが...)

            .file       "tmp.c"
            .version    "01.01"
    gcc2_compiled.:
    .globl a
    .data
            .align 4
            .type        a,@object
            .size        a,4
    a:
            .long 4
    .globl b
            .align 4
            .type        b,@object
            .size        b,4
    b:
            .long 3
    .text
            .align 4
    .globl main
            .type        main,@function
    main:
            pushl %ebp
            movl %esp,%ebp
            movl b,%eax            # 変数bの値を %eax にロードする
            addl $-124,%eax        # -124 を %eax に加算する
            movl a,%edx            # 変数aの値を %edx にロードする
            subl %eax,%edx         # %edx から %eax の内容を引く
            movl %edx,%eax         # %edx の内容を %eax に移す
            movl %eax,a            # %eax の値を変数aに格納(ストア)する
            leave
            ret
    .Lfe1:
            .size        main,.Lfe1-main
            .ident      "GCC: (GNU) 2.8.1"

となる。a: などが大域変数の場所を表している。


問2

        a = 5+(6+(7+b));

をコンパイルした結果はどうなるかを、自分の頭で考えて示せ。

        a = 0+(1+(2+(3+(4+(5+(6+(7+b)))))))-(0+(1+(2+(3+(4+(5+(6+(7+b))))))));

は、どうなるだろうか? 自分が、どのように考えて、その結果を出したのか、そして、それをアルゴリズムにするにはどうすれば良いのかを考えよう。

    ヒント
        まず式を木の形に書いて、構造を調べる
        push, pop を使ってスタックを使う方法もある

実際のコンパイラの出力と比較してみよう。


問2

上のプログラムをIntel CPU上で、gcc -O -S test.c を使ってコンパイルすると最適化がかかる。最適化した場合としない場合で、どのような違いが出るか? (ヒント diff を使うと簡単...)

問1で、これらの結果を実際のアセンブラで実行しテストするには、どうすれば良いか考えて実行せよ。

これらの命令が実際に生成されるCのソースコードを考えて、それをコンパイラに通し、実際に命令が生成されることを確認せよ。(ただし、データのアドレスは、変わっても良いとする)


Tokenizer 字句解析


手で木に変換する

いままでに出た式を木に変換して見よう。

まず必要なのは、木にする時の一番基本的な単位を決めることである。これは単語の切り分けという。または、Tokenize 字句解析という。Tokenize するプログラムをTokenizer または、字句解析器という。

字句解析のルールは簡単で、

を認識すれば良い。ここでcommentも消してしまうのが良い。字句解析を表すのに、正規表現というのを使うこともできる。ここで[]は、その中の文字の選択、*は繰り返しを表す。あと|で複数の正規表現の選択を表す。

Tokenizer は、通常、そのtokenの型(type)と値(value)を返す。プログラムは、 この ような感じになる。

実際には、適当な状態遷移(state transition)を作ってやれば良い。より複雑な例は、また、あとで見ることにしよう。

このプログラムでは、token()を呼びだすことにより以下ようにtypeとvalue が返る。

例えば、 (2+1030/a)-2 という式は以下のように分解される。



宿題

    Subject: Report on Compiler consturction Lecture 10/29

というSubjectのメールにして、kono@ie.u-ryukyu.ac.jp まで送ること。また授業を受けなかったものは、課題を、

    Subject: Practice on Compiler consturction Lecture 10/29

というサブジェクトで送ること。


Shinji KONO / Mon Nov 26 17:20:50 2001