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Subject: テッド・チャン
From: kono@ie.u-ryukyu.ac.jp (Shinji KONO)
Organization: Information Engineering, University of the Ryukyus
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Date: Mon, 19 Jan 2004 21:25:37 +0900
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河野真治 @ 琉球大学情報工学です。

最近、出張が多い割りにあんまり読めなかったんですが...

テッド・チャンの「あなたの人生の物語」をようやっと読みました。
長編書かない人なのね。ちょっと、もったいない気がする。大味な
長編が多い中で、こういうのはうれしいかも。

この人は、思考停止と多重視点が良いですね。あるところから、
すっぱり「説明停止」。で、そこからあとは割りと緻密に世界を
構成してく。そんな感じ。説明過多で現実世界との整合性に
苦心するより、こっちの方が良い感じ。

表題作は僕にはいまいちでした。ただ、本のタイトルとしてはいい
かな。非因果的な認識を持つ宇宙人の言語ってのは、アイデアとし
ては面白いけど、ちょっと使いこなせてなかったかな。

イーガンにタッチが似てるんだよね。「顔の美醜について」は、イ
ーガンの「しあわせの理由」とアイデアとしても近いし。イーガン
よりも多重視点で書いているところが、うまくいっているんだな。
イーガンだったら、もっと「どうして、カーリーが可能か」とか、
それに付随する成果は何が可能かとかいろいろ追求するんだろう
けど、チャンは、そこだけしか議論しないって感じですな。

「地獄とは神の不在なり」は、思考停止ポイントが「天使降臨と奇
蹟が実在だったら?」ってところなんだよね。これも、複数の視点
がうまく取り扱われていると思う。

ただ、イーガンよりは科学に関する理解が浅いと思う。「ゼロで割
る」なんかは、「論理学が矛盾していたら」なんていうテーマなん
だけど、最初のゼロで割るって話あたりから既にあやしいし、矛盾
を導出するあたりも追求が甘すぎ。現代数学は、何回か矛盾の露呈
を経験して来ているので、そのあたりを勉強してから書いて欲しか
ったな。特に、それで悲惨な目にあったカントールに関して記述が
ないのは致命的だと思う。

「理解」は、僕は似たようなのを読んだ記憶があります。偶然の治
療の副作用で超人になった人の話。アルジャーノンをあげる人も多
いと思うけど、ちょっと違うな〜 なんだったかなぁ。超能力スパ
イ物だったような気もするし。この後の話も知りたい気がする。
超人ものはもう一つ入ってますが、まぁ、どうでもいい話だね。
ちょっと、軽いんだよな。のりが。イーガンの方が僕の好みか。

バビロンの塔とか七十二文字とかは、僕には面白いとは思えません
でした。割りと楽観的な終り方が、むしろ、テッド・チャンの現状
認識の甘さみたいなものを強調していて、面白いと思うより馬鹿馬
鹿しいと思っちゃう感じ。特に、七十二文字は、僕は、悲劇で終る
べき物だと思う。

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Shinji KONO @ Information Engineering, University of the Ryukyus, 
河野真治 @ 琉球大学工学部情報工学科, 
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