命令：マシンの言葉

（３．１）はじめに

命令（Instruction）：　コンピュータの言葉

命令セット(Instruction set)：　コンピュータの語彙（言葉の集まり、全体）

ここでは、MIPS Computer社の命令セットを取り扱う。MIPS命令セットは、ソニーPlayStation、任天堂Nintendo64、シリコン・グラフィックス社のワークステーションで用いられている。

（３．２）コンピュータ・ハードウエアの演算

• すべてのコンピュータには算術演算（加算とか減算）が必要である
• MIPSのアセンブリ言語では、加算を以下のように示す

add a, b, c　　#bとcの和をaに収める
add a, a, d　　#結果として、b+c+dの和を、aに収める
add a, a, e　　#結果として、b+c+d+eの和を、aに収める

• ＃以下末尾まではコメントを意味する
• a, b, cのような演算に必要な変数をオペランドという

• MIPSの算術演算では３つのオペランドがいる　
  →　必ず３つということで単純化している

設計原則１：単純性は規則性につながる

• 減算は

sub a, b, c　　#b-cをaに収める

例題P98-1

例題P98-2

（３．３）コンピュータ・ハードウエアのオペランド

• Cのような高級言語では変数を自由に使うことができる。

int a, b, mem[100], *p;

• ところが、算術命令のオペランドに自由に変数を指定できない
• 算術命令は特殊な記憶領域の中から選んで使用する。
• この領域をレジスタ（置数器、そろばんのようなもの）という
• MIPSのアーキテクチャではレジスタの長さ（大きさは）32ビットであり、
  この３２ビットをMIPSではワードと言う
• MIPSでは32ビットレジスタが32個用意されている

レジスタの数に限りがある理由は、

設計原則２：小さければ小さいほど高速になる

図：後半の授業で取り扱う小規模MIPSの図

• レジスタの数は３２なので、０から３１の番号を付けて区別できるが、
• Cプログラムの変数に対応するレジスタ名として、$s0, $s1, $s2､...
• MIPSの命令にコンパイルするために一時必要なレジスタを、$t0, $t1, t2, ...　とする。

例題P100

さて、レジスタに入らない変数はどうするのか？

（答え）メモリに蓄える。しかし、算術演算はレジスタに対してしか行えない。
ということで、メモリとレジスタ間のデータ転送命令が必要となる。

メモリ内のワードにアクセスするには、命令中でメモリのアドレスを指定しなければならない。

例題P101

ハードウエアとソフトウエアのインターフェース

例題P103-1

例題P103−2

（３．４）コンピュータ内での命令の表現

• コンピュータ内ではすべてが’０’もしくは’１’で表現される
• レジスタ名と番号の対応
• $zeroレジスタは特殊レジスタで値はつねに’０’

例題P106

例題P108

（３．５）条件判定用の命令

• 「自動的な計算機の真価は、命令系列を繰り返し実行できること、しかもその繰り返し回数を計算結果に基づいて決めれることである。」
• すなわち、高級言語において if 文を用いることができる

beq $s1, $s2, L1　　# $s1と$s2が等しければ、L1のラベルの命令へプログラム実行を分岐

bne $s1, $s2, L1　　# $s1と$s2が等しくなければ、L1ラベルの命令へプログラム実行を分岐

j L2　　　　　　　　　#　無条件にL2ラベルの命令へプログラム実行を分岐

slt $t0, $s0, $s1　　# $s0 < $s1ならば、$t1を１にする

例題P112

例題P113

例題P116

クイズ２　：　学籍番号　名前　日付　を書いて　提出すること！

１）変数ｈがレジスタ$s2、配列Aのベースアドレスがレジスタ$s3に対応するとして、下記のCコードをコンパイルした結果のアセンブリコードはどうなるか？

A[1] = h + A[0];
A[2] = h + A[1];

２）P108の例題を参照して、下記のアセンブリコードを機械語に変更せよ

lw $t1, 1200($t2)
add $t3, $s2, $t1
sw $t3, 1200($t2)

宿題２　：　学籍番号　名前　日付　を書いて　提出すること！

１）演習問題３．９

２）演習問題３．１１

以上