PERLOBJ(1)               USER COMMANDS                 PERLOBJ(1)



NAME
     perlobj - Perl のオブジェクト

DESCRIPTION
     まず最初に、Perl でのリファレンスが何かを理解する必要があり
     ます。 そのため、perlref manpage を参照してください。

     ここに、安心材料としてとても簡潔な定義を 3 つ示します。

     1.  オブジェクトとは、単に自分が属するクラスを知っているリフ
         ァレンスのことです。

     2.  クラスとは、単にオブジェクトリファレンスを扱うためのメソ
         ッドを提供するパッケージのことです。

     3.  メソッドとは、オブジェクトリファレンス (あるいは、静的メ
         ソッドには、パッケージ名) を最初の引数として期待するサブ
         ルーティンのことです。

     ここでは、これらのポイントを掘り下げていきます。


     オブジェクトは単にリファレンスである

     C++ とは違って、Perl ではコンストラクタのために、特別な構文
     を用意していません。 コンストラクタは単に、あるクラス内に
     "bless" されたリファレンスを返すサブルーティンで、一般にその
     クラスは、該当サブルーティンが定義されているクラスです。 典
     型的なクラスの例を示します:

         package Critter;
         sub new { bless {} }

     {} は、key/value ペアを 1 つも含まず、名前の無いハッシュへの
     リファレンスを作ります。 bless() がそのリファレンスを受け取
     って、そのリファレンスが参照するオブジェクトに対し、現在のパ
     ッケージが Critter であることを告げ、そのリファレンスを返し
     ます。 これは、参照されたオブジェクト自身が bless されたこ
     とを知っているため、簡単にしたもので、以下のようにそのリファ
     レンスを直接返することができあます:

         sub new {
             my $self = {};
             bless $self;
             return $self;
         }

     実際には、コンストラクタによる構築の一部として、クラス内のメ
     ソッドを呼ぶような、より込み入ったコンストラクタで、このよう
     な構成を目にすることが多くなります。





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         sub new {
             my $self = {}
             bless $self;
             $self->initialize();
             $self;
         }

     クラスパッケージ内では、メソッドは、そのリファレンスを通常の
     リファレンスとして扱います。 クラスパッケージの外では、その
     リファレンスは一般に、そのクラスのメソッドを通してのみアクセ
     スできる、直接参照できない値として扱われます。

     コンストラクタは、その時点で別のクラスに属していて参照されて
     いるオブジェクトを、再度 bless することができますが、その場
     合には、新しいクラスが、最後の後片付けに全責任を持ちます。
     以前に行なわれた bless は忘れ去られ、オブジェクトは、その時
     点では、1 つのクラスにしか属することができません。 (ですが、
     もちろん多くのクラスからメソッドを継承することは、自由です。)

     明確化事項: Perl オブジェクトは、bless されます。 単なるリ
     ファレンスは、されません。 オブジェクトは、自分が属している
     パッケージがどれであるかを知っています。 リファレンスは、知
     りません。 bless() 関数は、オブジェクトを探すために、単にリ
     ファレンスを用います。 以下の例を見てみましょう:

         $a = {};
         $b = $a;
         bless $a, BLAH;
         print "\$b is a ", ref($b), "\n";

     このプログラムは、$b が BLASH であると報告してくれます。 つ
     まり、明らかに bless() は、オブジェクトに対して働くのであっ
     て、リファレンスに働くものではありません。


     クラスとは単にパッケージである

     C++ などとは違って、Perl ではクラス定義のための特別な構文を
     用意していません。 メソッドの定義を入れることによって、パッ
     ケージをクラスとして使用します。

     各々のパッケージには、@ISA という特別な配列があり、現在のパ
     ッケージでメソッドが見つからなかった場合に、どこを探すかとい
     うことが書いてあります。 Perl では、これによって継承を実現
     しています。 配列 @ISA の各要素は、たまたまクラスである、他
     のパッケージの名前になっています。 クラスは、@ISA に現われ
     る順序で、見つからなかったメソッドを (深度優先) 検索します。
     @ISA を通じてアクセスできるクラスをカレントクラスの基底クラ
     スといいます。

     必要なメソッドが、基底クラスの中に見つかれば、効率化のために、
     現在のクラスの中にキャッシュされます。 @ISA を変更したり、



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     新しいサブルーティンを定義すると、そのキャッシュを無効にし、
     再び Perl に検索させるようにします。

     メソッドが見つからず、AUTOLOAD ルーティンが見つかれば、見つ
     からなかったメソッドの代わりに、それが呼び出されます。

     メソッドも AUTOLOAD ルーティンも @ISA に見つからなければ、最
     後の手段として、UNIVERSAL というクラスで、メソッド (あるいは
     AUTOLOAD ルーティン) を探します。 これでもダメならば、最終
     的に諦めて、エラーを出すことになります。

     Perl のクラスは、メソッドの継承だけを行ないます。 データの
     継承は、クラス自身に任されます。 全般的にこのことは、Perl
     では問題とはなりません。 多くのクラスは、自分のオブジェクト
     の属性を、名無しのハッシュを使ってモデル化するからです。 そ
     のハッシュは、そのオブジェクトと何らかの関係を持とうとする、
     さまざまなクラスによって切り分けられるために、自分自身の小規
     模な名前空間として働きます。


     メソッドとは単にサブルーティンである

     C++ などとは違って、Perl ではメソッド定義のための特別な構文
     を用意していません。 (だたし、メソッド呼び出しのためには、
     少しばかり構文を用意しています。 これについては後程。) メ
     ソッドでは、最初の引数がオブジェクトか、自分が呼び出されたパ
     ッケージである必要があります。 メソッドには、2 つの種類があ
     り、C++ での最も近い 2 つのメソッドの種類に準じて、静的メソ
     ッドと仮想メソッドと呼びます。

     静的メソッドは、最初の引数としてクラス名を期待します。 これ
     は、全体としてのクラスに対する機能を果たすもので、クラスに属
     する個々のオブジェクトに対するものではありません。 コンスト
     ラクタは、典型的な静的メソッドです。 多くの静的メソッドは、
     その第一引数を単に無視してしまいます。 既にどのパッケージに
     いるのかは、分かっていますし、どのパッケージを介して起動され
     たかは、関係がないからです。 (静的メソッドは、通常の仮想メ
     ソッドと同じように、継承トリーをたどっていますから、これらの
     パッケージが等しいとは限りません。) この他に、静的メソッド
     を使う典型例としては、名前によるオブジェクトの検索があげられ
     ます:

         sub find {
             my ($class, $name) = @_;
             $objtable{$name};
         }

     仮想メソッドは、最初の引数としてオブジェクトリファレンスを期
     待します。 最初の引数を shift して、"self" や "this" という
     変数にいれ、通常のリファレンスとして使うことがよく行なわれま
     す。




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         sub display {
             my $self = shift;
             my @keys = @_ ? @_ : sort keys %$self;
             foreach $key (@keys) {
                 print "\t$key => $self->{$key}\n";
             }
         }


     メソッド呼び出し

     メソッドを呼び出す方法には 2 つあり、その 1 つは既になじみの
     深いものですし、もう 1 つは見たことのある格好をしています。
     Perl 4 は、既に

         print STDERR "help!!!\n";

     としたときに使われる、「間接オブジェクト」構文を持っていまし
     た。

     この同じ構文が、静的メソッドにも仮想メソッドにも使われます。
     先に定義した 2 つのメソッド、オブジェクトリファレンスを検索
     するための静的メソッド、その属性を出力するための仮想メソッド
     を使ってみましょう。

         $fred = find Critter "Fred";
         display $fred 'Height', 'Weight';

     これらは、間接オブジェクトのところに BLOCK を使って、1 つの
     文に組み合わせることができます:

         display {find Critter "Fred"} 'Height', 'Weight';

     C++ ファンのために、同じことをする -> を使った構文も用意して
     あります。 引数がある場合には、括弧が必要です。

         $fred = Critter->find("Fred");
         $fred->display('Height', 'Weight');

     あるいは、1 文で、

         Critter->find("Fred")->display('Height', 'Weight');

     ある構文が読みやすいと感じることがあり、別の構文の方が読みや
     すいと感じることもあります。 間接オブジェクトの構文は、混乱
     させるようなものではありませんが、通常のリスト演算子としての、
     同様の曖昧さも持っています。 間接オブジェクトのメソッド呼び
     出しは、リスト演算子と同じ規則を使って解釈されます: 「関数の
     ように見えれば、それは関数です。」 (2 つの並んだ単語が関数
     名のように見えると考えれば、です。 C++ のプログラマは、特に
     最初の単語が "new" のときに、規則的にそのように考えるようで
     す。) つまり、



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         new Critter ('Barney', 1.5, 70)

     という括弧は、その後に何が来ようとも、メソッドに対するすべて
     の引数を囲っているものとして扱われます。

         new Critter ('Bam' x 2), 1.4, 45

     と書くのは、

         Critter->new('Bam' x 2), 1.4, 45

     と同じことで、目的とは違うでしょう。

     どのクラスのメソッドを使うかを指定したい場合もあります。 そ
     の場合には、通常のサブルーティン呼び出しとして、メソッドを呼
     び出すことができます。 必須の最初の引数は、明示的に渡さなけ
     ればなりません:

         $fred =  MyCritter::find("Critter", "Fred");
         MyCritter::display($fred, 'Height', 'Weight');

     しかしながら、この場合には継承を行ないません。 単に Perl が
     メソッドの検索を開始する特定のパッケージを指定したいだけなら
     ば、メソッド名にパッケージ名を付けて、通常のメソッド呼び出し
     を使ってください:

         $fred = Critter->MyCritter::find("Fred");
         $fred->MyCritter::display('Height', 'Weight');


     デストラクタ

     オブジェクトに対する最終的な参照がなくなると、オブジェクトは
     自動的に、削除されます。 (これは、グローバル変数にリファレ
     ンスを入れている場合には、exit した後になるかもしれません。)
     オブジェクトがなくなる直前に制御をもらいたい場合には、クラス
     内で、DESTROY メソッドを定義することができます。 これは、適
     切なときに自動的に呼び出されますから、その中で独自の後片付け
     を行なうことができます。

     Perl では、ネストした削除を行ないません。 コンストラクタで、
     基底クラスの一つからリファレンスを再 bless したような場合に
     は、DESTORY のなかで、必要な基底クラスの DESTROY を呼び出す
     必要があるかもしれません。 しかし、これは再 bless されたオ
     ブジェクトにだけあてはまります。 現在のオブジェクトに含まれ
     ているだけのオブジェクトリファレンスは、その現在のオブジェク
     トが解放されるときに、自動的に解放され、削除されます。








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     まとめ

     これで、ほとんどすべてです。 さて、それでは、すぐにも出かけ
     て、オブジェクト指向設計の方法論に関する本を仕入れて、今から
     半年くらいは、それに頭を打ちつけ続けることが必要でしょう。

SEE ALSO
     その他のオブジェクトのしくみ、わな、助言について、perlbot
     manpage もチェックしておいてください。














































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